噛みしめる力が歯を壊している④

前回いろいろな姿勢のイラストを示しました。

嫌いな勉強に仕方なく取り組んでいるようです。いらいらして頬杖をついています。この状態で噛みしめれば一部の歯にグーッと強い力が加わる事になるでしょう。

 

 

腕枕をしながらTVを鑑賞中です。エキサイトしたり、息を呑んで集中して噛みしめれば、やはり一部の歯に強い力が加わるでしょう。       

 

 

寝ています。もう、歯ぎしりギリギリで噛みしめています。どんな夢を見ておられるのでしょう?楽しい夢ではなさそうです。怖い夢?苦しい夢?この場合はいろいろな歯に代わる代わる力が加わっていそうです。

 

いかがですか?

皆さんの中には、ふとした瞬間に一部の歯に力が込めて噛みしめていることにハッっと気がつかれる方もいらっしゃるかも知れません。

そう、寝ているときだけではなく、日中でも我々は無意識の時間があるのです。

厳密に言えば一つのことに集中することにより、他の事に意識が行かない状態といえます。

この時、意識しても出来ないような強い噛みしめる力が発揮されている可能性があるのです。

噛みしめる力が歯を壊している③

突然ですが、かみ合わせについて理解を深めるために、ちょっと以下の事を試してみて頂けますか?

1.まっすぐ前を向いて、小さく、軽く、下顎を開け閉めして上下の歯をかみ合わせてください。

 そうすると、普段の食事の時のように噛めると思います。

次に、軽く下顎を開けてリラックスした状態のまま、

2.頭を前に傾けてからゆっくりとかみ合わせて下さい。

 今度は前歯だけが当たって奥歯が当たらないのが分かります。上下の前歯の重なりが少なかったり、下の前歯が上の前歯より前に出ている方はそうはなりませんが、1のようには噛めないのは分かると思います。

3.頭を横に傾けてからゆっくりかみ合わせて下さい。

 今度は傾けた方の歯が先に当たるのが分かると思います。歯並びの関係によってはそうならない方もいらっしゃるかも知れませんが、やはり1のようにはならないことが分かると思います。

姿勢によって頭の傾きが変わると、もともと頭の骨にぶら下がっているだけの下顎は偏った方向にずれてしまいます。そのため1のように噛めなくなってしまうのです。

ちなみに、

4.頭を横にひねってからゆっくりかみ合わせると

やはり1のようには噛めないと思います。この場合は頭の傾きよりも下顎の骨に付着している筋肉に引っ張られて下顎がずれてしまうのが原因です。

いかがでしたか?姿勢の変化によってかみ合わせって変わっているのですよね。

そして、我々はいつもまっすぐ前を向いて生活しているわけではありません…

噛みしめる力が歯を壊している②

口にくわえたロープで電車を引っ張った男性の噛みしめる力は別格ですが、通常でも強く噛みしめると体重の2〜3倍の力が歯に加わると言われています。

60㎏の方でしたら120㎏〜180㎏もの力となります。

そう、体重が増えれば咬合力も増えるのかも知れません(笑)

さて、強大な噛みしめる力も全部の歯で受け止めれば耐えられるかもしれませんが、実はいつもそうとはかぎらないのです…

噛みしめる力が歯を壊している①

この写真、どのような状況だと思いますか?

男性が電車の前に横たわっています。
轢かれてしまう??

いいえ、よく見て下さい、電車から男性の口もとにロープが伸びています。男性はロープの先を口でくわえて、なんと!この電車を引っ張ったというのです!!

びっくりですよね!

しかし、ここで注目したいのは、「ロープの先を口でくわえて」引っ張ったというところです。

ロープの先を口でくわえて、つまり噛みしめて引いたのです!!
一体この男性の噛みしめる力はどれだけのものなのでしょうか? 想像を絶する力です。

かみ合わせ治療の感想③治療してみた実感

”噛み合わせはとても良い感じだ。何より、これまで奥歯であまり噛めていなかったのが噛めるようになった。肉など固いものをこれまでは犬歯付近で噛んでいたようで、奥歯で噛めるようになったことで、より弱い力で噛めるようになった。これまで、どれだけ力いっぱい噛んでいたかと驚いた。これに留まらず、しっかり噛んで食べられるようになったのを日々実感出来ていることに驚いている。”

Nさんは治療を受けたことで、今まで奥歯できちんと噛めていなかった事を実感されたようてす。

真ん中のネジが緩んだはさみは切りにくいものです。でも、それしかなければ何とかコツを探して使うことでしょう。しかしネジを締め、刃をとぎ直せば、いとも簡単に切ることが出来るようになるのと同様です。

"歯ぎしりは、マウスピースでカバーしてるので分からないが、日中の噛み締めでは、歯への偏りある負荷が減っているのではないかと勝手に思っている。"

Nさんはマウスピースを噛み割ってしまうことがあり、何度か作り治しました。潜在的な噛み締め力は強いようです。日中も行っていることに気がつかれたようで、直接歯に加わる力がコントロールされることはとても重要です。

”自分の中では歯ぎしり問題の解決のためにスタートしたこの治療だったが、結果として、理想的な噛み合わせを手に入れる事になり、歯ぎしり音の問題より遥かに重要な食べる時の噛み合わせを良くできたのはとても良かったと感じている。改善というレベルではなく改革してもらったというレベルだ。物がしっかり噛めていないと感られている方は、是非ともチェックしてもらう事をオススメします。小野田先生、ありがとうございました!”

食事がしやすくなるということは食生活の質の向上に繋がります。

40代のNさんにとっても今回のかみ合わせ治療はインパクトのあるターニングポイントとなったようですが、50代、60代、70代…と歳を重ねるごとに、美味しく食べられることは健康と人生の質に繋がっていると切実に実感されるようです。

また、当院のかみ合わせ治療は「予防的かみ合わせ治療」です。今後も定期的なチェックと適切なフォローアップを行うことで、Nさんも歯のトラブルの発生頻度が減って来ることを実感されるようになると思います。引き続きご来院頂けますと幸いです。

かみ合わせ治療の感想②治療の内容

”最初に、噛んだときの圧力を測る。機械を使い噛み方をデータ化し、グラフィカルな説明を受けた。その後は、噛み合わせをチェックし、最適なかみ合わせになる様に削ったり、足したり。”

かみ合わせは歯並びのように見て分かるものではなく、主観的に判断するのは困難です。当院ではかみ合わせ接触検査装置「Tスキャン」を用いてかみ合わせのバランスを視覚化し、患者さんと検査結果を共有しております。検査結果から治療の妥当性をご理解頂いた上でかみ合わせ治療に入ります。

”虫歯でもない歯を噛み合わせのために削るのだ。初めは抵抗があったが、どうせ日中や夜に自分の歯で削ってるのだから、まぁいいかと。歯ぎしりを長年してると、削れてくる歯が変わるのだ。その時に邪魔になる歯を無意識に削ってるらしい。私の場合、前歯も削れだして見た目も悪くなりちょっと嫌だなという状態だった。削るのとは逆に足すということもする。歯の上に透明な歯の代わりとなる山を作っていく感じ。削ったり、足したり、噛み合わせがぴったりになるまで延々調整し続けた。”

歯ぎしりは顎の関節の機能(潤滑性)を妨げるような、上下の歯のかみ合わせの不具合を除こうとする無意識の擦り合わせ行為であるという側面を持っております。

しかし、人体の中で一番堅い組織である歯のエナメル質を自ら適切に擦り合わせることは出来ず、不適切に削れて悪循環に陥ることが殆どです。Nさんもそのような状況でした。

かみ合わせの治療は「削る調整」「足す調整」を並行して行います。削る調整は最少で21ミクロン(0.021㎜)の精度で行います。そのため、時に「延々と」慎重に調整することとなります。

”私の場合、人より少し多かったみたいで4ヶ月 12回で完成した。途中、昔の詰め物がいまいちだったので詰め直しもしてもらった。地道に噛み合わせの調整をして頂き、いったんの完成形となった。私の感覚ではひとつの作品だ。小野田先生の執念というか、ミリ以下の調整を繰り返し繰り返し、自分の歯の上に理想の噛み合わせを作り上げて頂いた作品という感じだ。”

Nさんは口を開けるときに左の顎の関節にクリックがあり、不安定でした。そのため治療が一段落するのにやや時間がかかりました。当院では通常8回から12回の治療で一段落すると説明しております。それより早く落ち着く方もいらっしゃいますし、それ以上かかることもあります。「自分の歯の上に理想のかみ合わせを作り上げて…」というのはまさに的を得た表現だと思います。

                            ③へ つづく

かみ合わせ治療の感想①きっかけ

Nさん(40歳男性)から当院のかみ合わせ治療の感想を頂きました。

まずは治療を受けることになったきっかけから。

’’私は小学生の時から歯ぎしりをしている。社会人になってからはマウスピースをして寝ている。マウスピースを忘れることもあるし、日中も噛み締めているからだろうか、歯は磨耗し、糸切り歯は山が削れ、前歯も削れてきた。解決策もなく、どうしたものかと思っていた。’’

Nさんの場合は奥様からですが、ご家族の方から歯ぎしりがうるさいという指摘を受けて来院される方はいらっしゃいます。殆どの方の歯は長年にわたる歯ぎしりで全体的にすり減っているのが特徴です。

’’両親が小野田先生に診てもらっていたので、歯の違和感があった時に診て頂いた。その時の問題は大したことなかったのだが、噛み合わせの問題を指摘され、長年の課題であった歯ぎしり問題が解決するかもしれないと治療をお願いした。’’

かみ合わせの問題をご本人が自覚していることは少ないです。なぜならかみ合わせの感覚というのは、例えば歯並びの善し悪しと違い、人と比べて分かるものではないからです。

                            ②へ つづく

明けましておめでとうございます

昨年この「予防的かみ合わせ治療の日々」を立ち上げたものの、なかなか更新できずにおりますが、日々の臨床で感じている事、考えることは沢山あります。今年は出来るだけ更新して参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

   2018年 元旦  小野田歯科医院 小野田恵一

歯科恐怖症だった友人④(本人からコメント)

友人からこのブログの内容を見てもらったところ、以下のコメントを頂きました。

歯科が嫌いな患者はスタッフが変わったり複数いるのはあまり好きでないです。

なぜなら主治医に弱点を説明してようやく理解が進んでも、衛生士が来たらまた1からの説明をしなくてはなりません。

効率化は否定しないものの、オーダーメイドの細やかさは分業制の歯科医院には望めない・・・

これが、患者意見から、逆の小野田歯科医院の強みなんだと思います。

歯科治療では恐怖症患者に、自由診療で、貸切時間を作るところもありますが、逆説的には先生を貸切ですものね。

当院のスタッフは受け付けのみです。

そのため、診療は殆どすべて院長である私が対応する体制なのですが、効率に難がある反面、彼のような歯科恐怖症の患者さんには都合が良いようですね。

歯科恐怖症の中には嘔吐反射など、器質的なものもありますが、過去の私の臨床経験では、かたくなに嘔吐反射で型取りが出来なかった患者さんは記憶の限り一人しかおられません。あとの方は最初はつらそうにしていても、治療になれてくると治まってしまいます。

私:「そう言えば、最初のころ型をとるとき、オェッとしていましたよね?」

患者さん:「ああ、そういえばそうでしたね。」

という感じです。

また、幼少期を含めた過去のトラウマティックな治療経験があったと思われる患者さんで刺激に対し極度に反応して身体がビクッとなってしまったり、多汗となる方もいらっしゃいましたが、よく話し合い、治療に対して受け身にならずに積極的に参加するように促して、痛みを伴う治療に対しては必ず麻酔をすると確約するようにしたところ、前向きに治療に通って来られるようになりました。

患者さんと歯科医師の信頼関係というものを明確に定義するのは難しいですが、患者さんが「治療されている」という意識を持たれて治療を受けているうちはよい関係を保つことは難しいと思っています。歯科医師と患者さん、それぞれに役割があり、それらをきちんと果たす必要があると思います。このことはまた改めて書きたいと思います。

歯科恐怖症だった友人③(本人の感想)

彼との話のやり取りから治療についての感想を挙げてみました。

  • 穴あきの前歯が綺麗になり口を開かないようにとか常に意識していたことが要らなくなり仕事でのコンプレックスがなくなった。
  • 根の歯茎の腫れもなくなり、歯磨きの出血も減った。
  • かみ合わせの治療最初は違和感あったが慣れてきた。
  • 時々頬の内側を思いっきり噛んで流血していたが、体調かなんかで腫れていたから噛むのだ思っていた。かみ合わせの不具合によるものだとは思いもよらなかった。
  • 以前は居眠り中に噛み締めて痛みを感じることがあったのがなくなった。
  • (オープンハート姿勢)によって治療の痛みをコントロール出来ることに驚いた。以前に受診した歯科医院では表面麻酔した上に体温近く温めた麻酔薬を注入していたが、打つポイントが違うのではないかというくらいに周りばかり感覚がなくなって、治療の痛みは全く取れなかった。
  • 左右共に心配なく噛めるようになったことが実に幸せに感じる。